おやつのじかん







「差し入れ」

そう言って、はい、とガイから手渡された紙袋の中身を、ジェイドが覗き込む。
その中には紙に包まれた何かが入っていた。
中身がジェイドには全く分からず、思わずガイに尋ねてしまった。

「…何です、これは」
「焼き芋だよ」
「焼き芋?」
「そ。ジェイド、食ったことないか?」
「生憎」

そう言うと、ガイは嬉しそうに笑った。

「じゃあさ、早速食おうぜ。美味いよ、焼き芋」
「…この紙がですか?」
「あのなぁ。只単に包んであるだけだよ」
「分かっていますよ」
「なら言うなよ…。まぁいいや、茶を用意してくるから待っててくれよ」

ガイは奥にある給湯室までさっさと行ってしまった。
彼の後ろ姿を見送った後、ぽつんと残された『焼き芋』入りの袋へと手を伸ばす。
紙を持ち上げるとそれは確かな重量があり、紙と手袋越しでも分かるほど温かかった。

「ジェイド」

ひょいと給湯室から顔を覗かせたガイは、ジェイドが手にしている物を見て、あ、と呟いた。

「何です」
「ああ、ごめん。言わなかったけど、ちょっと土付いてるかもしれないから、手袋外さないと汚れるぜ」
「分かりました。…開けても?」
「いいよ。そんかわし、まだ食べるなよ」
「はいはい」

そう言うと、ガイは再び給湯室へと戻っていった。
土が付いているという彼の言葉に、なるほど、とジェイドは内心頷いた。
包み紙をよく見ると、ところどころに確かに付いている。
一度紙袋へ戻し、手袋を外してから今度こそ『焼き芋』を取り出した。
紙を開くと、ふわりとした甘い香りが鼻を擽った。

「美味そうな香りだろ」

悪戯っ子のような無邪気な笑顔をしながら、ガイが執務室へと戻ってくる。
手にしているトレーに乗っているカップには、あまり見かけない色の茶が入っていた。

「この香りは、スイートポテトではないんですか?」
「そんな上品なお菓子じゃないよ。芋をただ焼いただけだからな」
「ほう」
「でも、結構焼くのは難しいんだ。時間とか、火加減とかさ」
「…では、そちらのお茶は?」
「ん、これ? これは、煎茶っていうんだってさ。ペールが手に入れてくれたんだ」

手渡されたカップには、透き通った緑色の茶が入っていた。
初めて見るお茶をじっとジェイドが見ていると、ガイは開かれた紙の上に乗っている芋を手にする。
そしてそれを二つに割ると、半分をジェイドに手渡した。

「紅茶でも良いかなって思ったんだけどさ。
 ペールが淹れてくれたことがあるんだが、この煎茶ってのの方が、焼き芋にあってると思って」

カップなのがちょっと、見た目があれだけど。

そう言うガイからカップを受け取りながら、ジェイドは焼き芋の中身をまじまじと見つめる。
ますますそれは色などがスイートポテトに酷似しているようにも思えたが、何も手は加えられていない。
ガイと言えば、早速焼き芋にぱくついている。
その様子を見て倣うようにジェイドも、皮をむいて一口齧り付く。

「…甘いですね」
「こういうの、駄目か?」

美味いというでもなくジェイドが感想をもらすと、ガイは途端に心配そうな顔をした。

「いえ、美味しいですよ」
「そっか」

ほっとしたように笑うガイに、ジェイドはすっと目を細めた。

「ただ…」
「? ただ、何だ?」
「中の色がね。何となく貴方を連想させるので、食べてしまうのが勿体ないと思ったんですよ」
「………はぁ!?」
「いやー、貴方ごと食べてしまうのもいいかもしれませんねー」
「アンタは…! もういい、返せ!」
「嫌ですよ。折角のガイからの差し入れですから」

顔を赤くしながら取り返そうと手を伸ばしてくるガイを避けながら、ジェイドは一口頬張る。
次いで、空いている片方の手で伸ばされたガイの手を掴むと、ぐいと引き寄せそのまま口づけた。

「っ、んぅ」

口移しでガイに食べさせ、離れる前にぺろりとガイの唇を舐めるのも忘れない。
すっと離れると、ガイは耳まで真っ赤になっていた。

「〜〜!!」
「ははは。真っ赤ですねぇ」
「だ、誰のせいだと…!」
「私ですね」

しゃあしゃあと宣うジェイドは、ガイが用意してくれた手拭きで手を拭った。
そうして今度はカップへと手を伸ばしている。
そんな彼に、これ以上何を言っても勝てはしないだろうとガイは践んだらしい。
がくりと項垂れて、机に突っ伏した体勢でカップに手を伸ばした。

「折角、アンタが疲れてるだろうと思ってこうして来たのに…」

今だ顔を赤くしながら、拗ねたように言うガイをジェイドは楽しそうに見やった。

「それはそれは…ありがとうございます。十分癒されました」
「いいえー。大佐殿のお役に立ててようございました」
「ガーイ、そんなに拗ねないでくださいよ」
「…まだうちにこれ残ってるんだぞ。…食べるたびにさっきの思い出したら、どうしてくれるんだ」

上目遣いで軽く睨んでくるガイに、ふっとジェイドは笑みを浮かべた。
カップに添えられているガイの手を取ると、その手に軽く口付ける。

「私で良ければ、いつでもお手伝い致しますよ」
「…言われなくてもそのつもりだ」

そして、ふいとそっぽを向いたガイの頭を、ジェイドは撫でた。



「さあガイ、いつまでもそうしてないで食べてしまいましょう。折角温かいのに冷めてしまいますよ」
「アンタがそれを言うか」








 omake→

ジェイドは雪国出身だから焼き芋を知らないと良いという妄想その1。
ガイはパパン達と焼き芋をやったことがあるという朧気な記憶と、ペールからの情報で焼き芋を知っていると良いという妄想その2。
二人に日本茶を飲ませたかったという妄想その3(でも描写はいれられなかった…orz)
書いている内に焼き芋の中身の色ってかなり黄色いような…ガイ?という妄想その4。
甘く〜甘く〜と念じた結果の、後半。

これらから生まれました。逝ってきます!!

  2006/10/15  春樹